特許出願又は特許権が共有に係る場合における各権利者の単独行為

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 日本では、特許を受ける権利又は特許権が共有にかかる場合、持分の譲渡、実施許諾(実施権設定含む)、特許権の持分を目的とする質権の設定については、他の共有者の同意を得なければならず、別段の取り決めが無い限り可能なのは出願に係る発明若しくは特許発明の実施のみである(日本国特許法第33条および73条)。
このため、日本の特許出願あるいは特許権については、仮に共同研究開発契約あるいは共同出願契約において各共有者の行為につき他の共有者の同意を得なければならないとする条項が存在しなくとも、別段の取り決めが無い場合には、上記日本国特許法により同意を必要とする旨の制限を受ける。

 しかし、外国の特許出願又は特許権が共有に係る場合には、必ずしも日本と同じ状況にはならない。
このため、日本人(日本企業)間であっても、日本人と外国人(日本企業と外国企業)間であっても、外国の特許出願又は特許が共有に係る場合には、契約において単独行為を明確に制限しておく必要がある。
さもないと、共有者の一方が、勝手に他人(他社)に当該一方の持分を譲渡し若しくはライセンスを許諾する可能性もある。

 次に、米国、欧州主要三カ国(ドイツ、イギリス、フランス)、中国および韓国における共有者の単独行為につき述べる(*)

1.米国

実施

他の共有者の同意無く自由実施可能である(35 U.S.C. Sec. 262)。

持分譲渡

特に制限する規定は無い。このため、各共有者は他の共有者の同意を得ることなく、自己の持分を第三者に譲渡可能である(35 U.S.C. Sec. 261)。

実施許諾

 非独占的(Non-Exclusive)なライセンスであれば、各共有者は他の共有者の同意を得ることなく、第三者に実施許諾可能である。しかし、独占的(Exclusive)なライセンスであれば、各共有者は他の共有者の同意を得なければ、第三者に実施許諾できない(Schering Corp. v. Roussel-UCLAF SA, 104 F. 3d 341 (Fed. Cir. 1997), Talbot v. Quaker State Oil Refining Co., 28 F. Supp. 544, 548 (W.D. Pa. 1938))。

2.ドイツ

実施

他の共有者の同意無く自由実施可能である。特に実施を制限する規定が無い。

持分譲渡

各共有者は他の共有者の同意を得ることなく、自己の持分を第三者に譲渡可能であると解する(ドイツ民法第747条第1文)。

実施許諾

非独占的(Non-Exclusive)、独占的(Exclusive)を問わず、各共有者は他の共有者の同意を得なければ、第三者に実施許諾できない(ドイツ民法第747条第2文)。

3.イギリス

実施

他の共有者の同意無く自由実施可能である(イギリス特許法第36条第3項)。

持分譲渡

各共有者は他の共有者の同意を得なければ、自己の持分を第三者に譲渡できない(イギリス特許法第36条第3項)。

実施許諾

非独占的(Non-Exclusive)、独占的(Exclusive)を問わず、各共有者は他の共有者の同意を得なければ、第三者に実施許諾できない(イギリス特許法第36条第3項)。

4.フランス

実施

一定の条件付きではあるが、他の共有者の同意無く自由実施可能である(フランス知的財産権法第613条29(c))。

持分譲渡

各共有者は他の共有者の同意を得ることなく、自己の持分を第三者に譲渡可能である(フランス知的財産権法第613条29(b))。ただし、持分を第三者に譲渡しようとする一方の共有者は、他の共有者に対して、譲渡価格を通知することとし、他の共有者は優先的にこれを買う権利がある。

実施許諾

非独占的(Non-Exclusive)なライセンスであれば、一定の条件を満たせば、各共有者は他の共有者の同意を得ることなく、第三者に実施許諾可能である(フランス知的財産権法第613条29(c))。
しかし、独占的(Exclusive)なライセンスであれば、各共有者は他の共有者の同意を得なければ、第三者に実施許諾できず、もし他の共有者の同意が得られない場合、裁判所の許可があれば実施許諾できる(フランス知的財産権法第613条29(d))。

5.中国

実施

他の共有者の同意無く自由実施可能である(中国専利法第15条第1項)。

持分譲渡

各共有者は他の共有者の同意を得なければ、自己の持分を第三者に譲渡できない(中国専利法第15条第2項)。

実施許諾

非独占的(Non-Exclusive)なライセンスであれば、各共有者は他の共有者の同意を得ることなく、第三者に実施許諾可能である(中国専利法第15条第1項)。しかし、独占的(Exclusive)なライセンスであれば、各共有者は他の共有者の同意を得なければ、第三者に実施許諾できない(中国専利法第15条第2項)。

6.韓国

実施

他の共有者の同意無く自由実施可能である(韓国特許法第99条第3項)。

持分譲渡

各共有者は他の共有者の同意を得なければ、自己の持分を第三者に譲渡できない(韓国特許法第99条第2項)。

実施許諾

非独占的(Non-Exclusive)、独占的(Exclusive)を問わず、各共有者は他の共有者の同意を得なければ、第三者に実施許諾できない(韓国特許法第99条第4項)。

(*)財団法人知的財産研究所,「国際共同研究における共同発明者・発明地の認定に関する調査報告書」,平成19年度特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書(平成20年3月)を参考にしましたので、詳細は、同報告書(特にp88~116)を参照願います。